知事の昔の小説うんぬん

日頃から敬愛させて頂いている某芥川賞作家でもあり地方自治体のトップを勤めておられる方が昔書いた小説を、ある程度線引きに意識的な人はそんな事はもうしないんだが、未だにあれを持ち出して、閣下の書いた小説がOKならエロマンガもOKなんじゃないでしょうか、という人がいる。


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中上健次というもう死んでしまった小説家がいて、晩年、マンガの原作をやった事があるらしい。
らしい、というのは、最近どこで読んだか忘れたがそこから引いた話なんだが、彼は、マンガである事ができないのに、すごくイラだったらしい。
何かというと、比喩。


「彼は、麻薬が切れた中毒患者のように寒くもないのにブルブルと震えていた」
「彼女は、地平線の彼方をゆく船を見送るような目で、僕を視界に入れながらどこか遠くを見ていた」
定例会見での都知事のように言いたいことだけ言うと、彼は去ってしまった」


赤字の所を、マンガでそのまま忠実に描写することは不可能なのだ。対象との距離感がマンガと小説とは違う。ワンクッションおいて、事物を構築し直すからだ。


とはいえ、ものすごく決定的に違うという事はない。世の中には主に自慰目的であるかのような小説は存在するし、小説のようなものがマンガではなく大衆娯楽の中心としてもっと部数が出ていれば、問題にならないとは限らない。
そして中心となる可能性は、恐らくもうほぼ無い。