陰謀論の典型

まず最初に読んでかんじるのが、やっぱ陰謀論ってどこまでも果てしないんだなあ、という事。
そこまでいったらキリがないんじゃないの、というひとつの典型としてここで挙げておく。

具体的にどのような誘導があったかと言えば、総理が辞意を表明した日の日本テレビのニュースゼロで、こんなやりとりがありました。

とはじまって、つまり日本テレビのニュースバラエティー番組で世論の誘導があったとid:essa氏は言うのだが。
そしてその番組でのやりとり(麻生クーデタ説を突然中川議員にぶつけた)を引用した後、こう締めくくる。

この出所の怪しい情報を、麻生氏に近い中川氏の出演時に突然ぶつけるというのは、どういうことなのか。全くの偶然で、その情報を中川氏にインタビューしているその瞬間に入手したのでしょうか

民放のニュース番組なんてのは演出を競うようなところがあって、別段同時に入ってきたニュースでなくても突然ぶつけてその反応を演出するなんてことはいくらでもありそうな話。麻生ファン中川ファンでなければとくに問題にするようなことでもないだろう。だいいち、こんな程度のものが陰謀なら、さしずめ選挙特番なんてのは陰謀だらけになってしまう。
しかもなぜこれが福田氏をバックアップする誘導になるのかも分からない。麻生クーデタ説によって麻生氏を貶めたいのならべつに中川氏の反応など見せる必要はないだろう。それとも、動揺し改心する中川氏を見せれば福田が圧倒的だと演出できる、とでも日テレが考えた、という事か。結果は、中川氏は「調べてみます」と言っただけなのだから、なんとも効果の薄い「陰謀」だったわけだし、下手をすれば中川氏に信憑性を低下させられる可能性だってあったわけなのだから、意味がない。
麻生クーデタ説の信憑性を高めたいのだったら、その説を補強してくれると思われる人物にこそ話を振ったほうが最大の効果を上げられるはずなのだ。
では、なぜ日テレはそうしなかったのだろう。答えは、ほんとうにそのとき緊急に入ったニュースだから、か、もしくはなんの陰謀もなかった、か二つしかない。


そもそもより根本的なことは、読売グループが総力をあげて、とか言っておきながら、こんなちいさなちいさな出来事しか見つからないことなんだが。

ダブルスタンダード

・その一

読売グループのことを「後ろの人」のために動くマスメディアとして指弾しておきながら、同様に巨大なメディアであるフジサンケイが報じることにはなんの疑いも抱いていないように思えること。そもそも"秘密会合"だのなんだのと三流週刊誌めいた言葉を使って報じる段階で、その記事が、一部の事情通みたいな人によって語られた程度のものである可能性が高いと思われるのだが。そして、そこにはその事情通の意思・解釈が介在していない、という事のほうが難しい。よくそんなものに簡単に依拠できるものだ。
サンケイというメディアは行革応援団を自負していた事があるくらい世論を主導したい質のあるメディアだと思うんだが、その体質はいつ改まったのか。
マスメディアというものがつねに「後ろの人」のために動く、とか、メディアはそういう事をすべきでないと論じるのであれば、ひとつのメディア論たりうるが、サンケイの動きをスルーしてただナベツネが云々いうのであれば、何の事はない自分の好まないイデオロギーによって色分けしてるだけの話だ。自分の好ましい政策ならばメディアがどう動いても構わない、というふうな。

・その二

以下の引用をまず。

要は、見える所で物を言うのか、見えない所でこっそり動くのかです。見えない所で動く人というのは、自分の判断や価値観でなく後ろにいる人たちのために動きます。だから、こういうことをやってネットで悪評がいっぺんに広まる時代になってもなかなか行動を変えられないのです。

id:essa氏はこのように書き、秘密裏に福田支持を決めた政治家たち(のことなんだろう)を批判する。


しかし私が「見えない所で動く人」というのを読んだとき一番に思い浮かべたのは別のある政治家
essa氏はその人について、ほんの2ヶ月前ほどまえにこんなことを書いている。勝ったのは無党派・リベラルか労組・マスコミか - アンカテより

これも何となく深謀遠慮っぽい匂いがする。「静養」は口実で、じっくり情報を吟味しているのではないか。

さらに、思いっきり希望的観測を言えば、ここで表に出ないことは、小沢さんのマスコミ不信の表れだと思う。「勝ったのは俺であって、あんたたちじゃないんだよ」と労組・マスコミ方面とその背景に釘をさしているのかもしれない。ここでヘタな言質を取られたら、本当に労組・マスコミが勝ったことになってしまうということだ。

見えないところで動く政治家と一般的に思われている小沢一郎について、表に出ないことを賞賛しているのだ。


また、その3日後のエントリではこうも書く。政界再編の対立軸は「タイゾー VS. イチロー」だあ - アンカテより

痛いニュース(ノ∀`):“静養中”の民主・小沢代表「実は公明党創価学会のトップと接触していた」と青山氏がTVで明かす
これも何となく深謀遠慮っぽい匂いがする。「静養」は口実で、じっくり情報を吟味しているのではないか。

アンカテ(Uncategorizable Blog) - 勝ったのは無党派・リベラルか労組・マスコミか
と書いたことが、半分だけ当たってたみたいだ。

「半分」というのは、ここで立ち止まったら民主党は危ないので、小沢さんは次の策を練っているのに違いないという読みは当たっていた。

これが本当のことかどうかはわからないが、たとえ嘘だとしても、このリーク自体が策略だろう。この情報によって与党は疑心暗鬼でバラバラになってしまい、衆院選に向けた協力体制を作ることに必死で、反撃の手を打つ余裕が無くなる。

ハズれていたことは、小沢さんが練っている策は守りの手で、民主党内部を固める策だと私は思っていた。「攻撃は最大の防御なり」だから、攻めの手も防衛策になるというか、今見ると、これ以上の防衛策は無いかもしれない。

反撃されたら、民主党は脆いと思うけど、ここで守りでなく攻めに出る所は、さすがは小沢さん、勝負師ですね。リーダーというは、常に一歩先を見てなくてはいけないもので、そういう意味では、ここですばやくこういう手を出す所は本物のリーダーでしょう

 ※強調は引用者
「静養」と称して創価学会のトップと対談していたことや、もしくはリークしたことに対して、さすが、本物のリーダー、と最大限の賛辞。


これはいったいどういう事か。どっちを主張したいのか。見えないところでこっそり動くことは良いことなのか悪いことなのか。
いきあたりばったりというか、その場限りで事を論じるのは、私も自戒しなければならないけど、さすがにこれはひどい
わずか2ヶ月たらずで、何のエクスキューズもなく、まったく逆の事を言っているということ、ここから推察できるのは、大言壮語的に「要は見える所で物を言うのか、見えない所でこっそり動くのかです。云々」とか論じていながら、essa氏は結局、目に見えるところで動くこと動かないことに関して、何の信念も持っていないんだろうなという事。


たしかに小沢氏について、「見えない所で動く人というのは、自分の判断や価値観でなく後ろにいる人たちのために動きます。だから、こういうことをやってネットで悪評がいっぺんに広まる時代になってもなかなか行動を変えられないのです。」というのは当たってる面もあるかもしれないけど。
しかしそのあと、「そんなことやっても誰も幸せにならない。」ともっともらしい断言をするのだが、小沢氏も誰も幸せにしないんだよね、きっと。
それとも小沢氏の隠密行動に限っては「誰かを幸せにする」とでもいうのだろうか。