若者を叩いてるのは誰なのか?

また不可解な記事が見られたのでちょこっと言及。
大学3、4年を定点観測とかいうが、大学生みたいな高等遊民で何が分かるというのだろう。元記事は20代全般についての調査であって、大学生についての調査でも20代前半についての調査でもないのに
私の場合定点ではないが、それなりに若い人に接してはいるのでその意識の変化はある程度わかるつもりだが、海外旅行についていうと行く人は何回でも行く、それまであまり行かない人は多少の臨時収入があっても行かない。ということ。その傾向は昔からあったが強まっているのではないか。今度(半ば初めて)海外行くんですよ、などと嬉しそうに語る、あるいは、それを羨ましげに聞き入るなんて事は殆ど見られなくなった。行く人は半ば日常化しているからいちいち報告しないし、行かない人は耳にしたとしても興味深くあれはどうだったこれはどうだった、と聞かない。「行ったんですか、あそうですか、ごくろうさまです」と内心おそらく(よく行きますねそんな遠いところカッタルイのに)調子で応対する。
そしてこれはある程度間違いなくいえるのが、若い人の定着志向、貯蓄志向が非常に強くなったということ。2極化している面もあるだろうが、まず浪費家が減った。そして多少の事では会社を辞めない。
これでは海外旅行などする人が減るのは当たり前だろう。出世は望まないがクビにだけはなりたくないから長い有給など絶対取らず見かけ上他の社員と同等に働こうとするし、また、将来を考えて大きな出費はなるべく控える。一番大きいのは、大型の消費を控えようとする傾向であって、海外旅行離れなんてのは、若者のクルマ離れと根は一緒なのであって、それで充分説明つくのだ。


上記の事は若者に関する意識調査だの新社会人アンケートだので、いろいろ実証できるだろうが、ここにいちいちリンクしない。
今の若者の消費に関する縮み志向は幾度も幾度も既存メディアによって報道されていて、ある程度ニュース的なものに接している人であれば半ば常識であるから。
まあ今回はその既存メディア云々に関する問題でもあるのだが。


つまり、何いってんの若者の海外旅行離れは進んでるじゃんということは、グラフを見づらくしただけじゃん、というツッコミがブコメで入ることでもう決着がついてはいるわけで、私がここで言いたい事は別にある。
それは、『既存メディアの「嘘」』が相変わらずネットではもてはやされるんだなあ、ということ。中身をあまり検証しなくても、○○新聞の統計の仕方はおかしいだろ、とやればそれだけで読まれる。全旅行者数における20代の比率だけでなく、全体の出国比率と20代の出国比率を比べているのだから若者の数の減少なんて全く関係ないのに。いわば逆眉唾状態なのである。
ネットというのは(マスコミや権力者によって)今まで隠されていた真実を見させてくれる魔法の空間、という意識をいい加減捨てたらどうだろう。


それともうひとつ分からないのが、若者の海外旅行離れが進んでいると報道することがなぜ「若い人叩き」になるのか、という事。
もちろん若い人が海外旅行に行かないという報道の裏には(なんとかすべき)という意を含んでいる部分があるかもしれないが、この記事は題名にみられるように表面上は若者特有の事情も勘案してはいる。ようするに仕方がない面もあるよ、と
それに比べれば、この記事に疑問を持ち反論し、若い人の海外離れは進んでないよと何としてでも述べたくなるような心情の方が、むしろ「若い人が海外に行かないことは問題である」という意識が強いわけで、そういう価値観を若者に当てはめることこそ、若い人叩きではないのか、と思う。つまり「そんなことないよもっと若い人はちゃんとしてるよ」と弁明することは、海外旅行に行かないことは良くない事だ、という価値観を旅行会社と共に共有している訳で。
というか、旅行会社はカネのためにそういう価値観をいうだけの可能性も当然仮定できるわけで、それに対してはまあそんな事も言わざるをえないだろうなあと同情できる部分はあるのだけれども。