賞与返上なんてとんでもない

あまりタイムリーな事はここに書いたことない気がするけど、さすがにしかしこれはないのではないか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070711-00000011-jij-pol
本文も引用させていただく。

年金の記録漏れ問題で、社会保険庁の全職員1万7000人のうち、92.9%が夏季賞与の一部返納要求に応じる意向を示していることが10日、分かった。また、故人を除く社保庁長官OB13人全員も、同日までに賞与と同程度の金額を国庫に寄付する意向を示した。政府筋が明らかにした。
 同筋によると、本庁よりも、地方事務所の職員で返納に応じる割合が高いという。また、記録漏れ問題の原因や責任を追及する検証作業が完了していないことなどから、一部組合が支払いを拒んでいる例もみられる。
 この問題に関し、塩崎恭久官房長官も同日午後の記者会見で、「かなりの割合で返納されると聞いている」と述べた。

なんで責任の所在がはっきりしないうちから、ボーナスの返上などをするのか。
というか、こんな事をされて怒らないメディアが(私の知る限り)まったく無いことが不思議で仕方ない。
こんなウヤムヤな責任の取らせ方をしてしまえば、今後、今回のデータ消失の責任の追及に関してもウヤムヤとなりかねないんだが。
これまでどおりボーナスも休暇もすべて規定どおり保証するなかでこそ、社会保険庁の職員としての倫理・責任感が生まれ追及への意識向上が期待できるのに、今のうちから賞与返上などさせてしまえば、もう責任取らされたんだから、というふうになって、必死こいてなんかする気など起きないんじゃないか?
とくに、何の怠慢もなく普通どおり職務を行ってきた社会保険庁の人(大部分がきっとそうだろう)のなかには、憤慨してやる気を無くす人が出ても不思議じゃない。でも公務員になるなんて人は真面目なおとなしい人ばかりなので、こんな理不尽なことされても頑張っちゃうのかね。


ところで末端の職員の待遇にかんしてまで怒ってる国民の方のうち、今回の賞与返上で、そりゃ当然だろ当然当然、と思ってる人はどれくらいいるのだろう。
「ボーナス返上だって?当然だろ。やったねザマミロ」と感じてる時点で、その人は少なからずガスを抜かされてしまってるわけで、厚生大臣や首相らの、あるいは社会保険庁へのこれ以上の批判を避けたい勢力の、目論見どおりに動いちゃってるんだよね。悲しいかな、狙ったとおりのヒトになっちゃってる。
そりゃ怒りはもっともだし、踊らされているというほどでもないんだけど。


ちなみに私は、今回の件について内情も殆ど知らないわけで、有名なブログ(木走日記)なども覗かせていただきたいへん参考になったんだけど、この日の内容は結構すごいものがあった。
年金不明問題:「やれやれ、非論理的国民感情ってやつは、手に負えないなあ」〜国家公務員の諸君、君たちは「公僕」なのですぞ! - 木走日記
タイトルで君たちは公僕なんだよ!と民間企業とは違うんだって事を強調しておきながら、本文ではこんなことを書くのだ。

だって、もし社保庁が民間企業だったらどうなると思う? ボーナス返納どころの事態では済まないでしょ、どこぞの食品会社じゃないが、間違いなく、経営者は処罰、会社自体の倒産の危機に直面し、大量の解雇者が出たことだろう。

いやべつに論理的に矛盾しているっていうわけでもないのだけど、今回の件を民間企業と比べることの違和感をいちばん刺激して頂いたってことで。


そもそも思うに、民間企業とは違うからこそ公僕と言えるわけであって。
所得の源泉が税金であることからはじまってその団体の運営が民間企業とはまったく違うからこそ、違う倫理基準を求められる=利益が出るか出ないかを問われないからこそ、ある意味、より高い倫理基準が求められる、のではないか?(それをこなしてきたかどうかはともかく)
たとえば、民間なんてのは利潤がでなきゃとっとと事業を止めてしまう事ができるし、儲かると思えばどんどん事業を拡大できる。自由だ。厳しい世界ではあるけれど、それはこんな自由と引き換えになっている。
役所はそんなわけにはいかない。どんなに頑張ろうと、画期的なアイデアを実現しようと、給料が規定以上増えるわけではない、ある意味つまらない仕事でも粛々とやってかなきゃならないのだ。
というわけで、民間企業の例を持ち出してくるのは、的外れって感じだし、攻撃される側のことまで考えると、ちょっとこれはアンフェアに感じる。