リベラルとは何か その親和性

またこのブログで書かれていることが気になったので。
政界再編の対立軸は「タイゾー VS. イチロー」だあ - アンカテ
まず、なぜ次のような嘆きができるのか、理解に苦しむ。アンカテなかの人いわく、

やっぱり、公明党+労組+公務員+マスコミ+旧経世会の政権を作る気なんでしょうかねえ。

小沢氏が公明党の幹部と接触していたのが本当だとして、それは民主党の党首として全く正しい選択と言わねばならないだろう。
民主党は「国民の生活が第一」といって選挙を戦ってきたのだ。
経済的自由、競争原理よりも、分配的正義を掲げて戦ってきたのだから、そういう政策と親和性の高いグループ(公明党社民党自民党左派)との連携を考えることは、民主党の政策をより実現可能なものにしていくための重要な選択肢のひとつで、彼は何も裏切ってはいない。


いや別段そんな民主党の政策が支持されたわけではないんだ、という指摘も当たってる部分がある。自民党オウンゴール説は、まったく的外れではないだろう。
しかしだからといって何をしても良いというわけではなく、建前上は選挙のスローガンに縛られるべきだし、まして、ほとんど前面に出ていない松下政経塾的政策を実施すべく画策することなど、2重に許されるべきではない。
もしそのような動きが党内に発生したら、切り捨ててもいいのではないか。
例えば、公明党はまだしも、社民党あたりと組むようなことは、松下政経塾系の人は大反対だろう。そういう人たちが騒ぎ出せば、党外に放り出す良いチャンスである。そしてそれは、「国民の生活が第一」というスローガンからすれば、まったく正当なことなのだ。


そもそも今回の民主党の勝利に際して、「浮かれて」いたのは誰かといえば、次のようなエールを結果判明直後に民主若手に送るような人、つまりアンカテの中の人のほうだったのではないか。

民主若手にとっては、小沢さんという人は目の上のたんこぶだと思うけど、やはりもうしばらくは小沢さんの手駒でいた方が彼らの力は発揮できると思う。そして、その間に学ぶべきことを学び、いつか本物の無党派リベラルが主導する党を作って欲しいと私は思う。

from 勝ったのは無党派・リベラルか労組・マスコミか - アンカテ
党のこれからの運営に関して厳しい言い方をしながら、全体的に感じられるトーンは小沢に対する期待に溢れているように感じられるが、この私の感じは違うだろうか?
多少は浮かれていたからこそ、短い期間で小沢に対する失望のエントリーがなされたのではないか?
いっぽう労働組合は浮かれているかというと、少なくとも連合のトップは、これは民主党の勝利ではなく、自民党の敗北だ、というような事を言っていたはずで、浮かれ感はあまり感じない。


また、このエールに関して書いておきたいことがもう一つ。
それは、民主若手=リベラル、ってどういう事?という疑問である。民主党内でリベラル勢力を代表するのは、横路、菅系ではないのか?
民主若手でとりあえず一番有名なのは、トップに立ったことがある前原氏ということになるが、例えば彼をリベラルと称するのはもう止めたほうが良いと思う。もちろん彼や彼の立場を支持する人は、リベラルを自認するだろうが、リベラルという言葉があまりに広義なのである。
リベラルという言葉で代表するものを、旧社会党的な中道左派的な考えに絞るべきではないだろうか。
例えば、韓国の大統領は一般的にリベラルと言われるが、北朝鮮に対する政策は宥和である。前原氏あたりと多分全然違うだろう。
本来的な意味から言えばリベラルというのは「自由」に重きをおくのだが、それは伝統とか慣習と対置された場合であって、いま現実に流通しているリベラルは「穏健」ということになるのではないか。

経済政策で穏健であれば分配的正義を第一に考えるということになるだろうし、外交では宥和・対話・非武力ということになるだろう。現実にそういうふうに、親和性はあらわれているように思われる。
例えば、労組に積極的に関わるような人は、ブッシュのイラク政策にも批判的なのではないか。
つまりは、リベラルというのは労組と対立するどころか親和性があるものなのではないか。「公務員」や「旧経世会」と親和性があるかどうかはともかく。


日本の政治の場では、左派的なもの(リベラル)と右派的なもの(ネオコンネオリベ)が、自民・民主それぞれのなかで混在し、根本的な対立点が顕在化しにくくなっているのだが、そのねじれの解消を待つ前に、我々自身の言説の場で、リベラルという言葉に、穏健左派的なものから、ネオリベなものまで代表させるような事を止めるべきではないか、と思う。
つまりわれわれの言語のなかの「混在」をこそ意識的にまずは解消していくべきなのだ。


そして民主党は「国民の生活が第一」と言ったのだから、党内の若手のうちの、松下政経塾的なネオコンな人たちと一刻も早く縁を切るべきなのだ。
それができるまで圧勝することはなかなか難しいとは思うが。