匿名のメリットの話

前回、匿名擁護者はそのメリットを強調するしかないという旨のことを書いたが、いよいよ匿名のメリットの話である。ちなみに別に今まで暖めていたわけではない。毎度のことだが、たいした事をこれから書くわけでもない。


で、匿名のメリットといえば、忌憚無く書けるという事に尽きるだろう。
私は以前こんな事を書いた
ここで一般論めいた書き方をしているが、これを書いたきっかけは何よりネガコメ是非論でしかなかった。ネガコメに関しては文字数も限られており、問題のあるコメントはゼロではないが全体として問題にするには足らない、むしろネガコメを問題視してしまうその耐性、許容性の無さの方が問題だと考えた。賛意ばかりではなくむしろ批判をこそ言論は求めるべきだろう、と。そこにこそ、その先があるだろうと。
しかし、この理屈であれば、はてなネガコメだけではなく匿名掲示板だって擁護できてしまうのである。
では私は態度変更をしたのだろうか、あるいは矛盾してるのだろうか。


匿名がいっけん有用に働いている場所がある。旅行のいわゆるクチコミや、Amazonのレビューなどだ。おそらく匿名であることでここには様々な声が届いているはずだ。つまり実名ではなかなか書けないような事も書くだろう。
これらを参考にしたことのある人は非常に多いだろう。2ちゃんなどハナっから相手にしていない、という人も、ネットで旅館を予約しようとして「お客様のこえ」とか見ればついクリックしてしまうだろうし、"建てつけが旧くて隣の部屋の音がまる聞こえ"だとか"空調が全く調整できなかった"とか書いてあれば躊躇するのではないか。
あるいは消費者とダイレクトに向き合う企業においては、ブログにおける自社の製品の素直な反応をリサーチしたい、あるいは既にロボット検索的にリサーチしている所もあるだろう。


これらの例は、【対象⇒対象への批判⇒対象の見直し⇒場合によっては改善】が、理想的にうまく行っている例。旅館にとってはじゃらん楽天に載せる代わりに批判を受け入れ、場合によっては改善する。おそらく多少の批判は受けても旅行サイトに載せることはメリットが大きいのだろう。サイトのユーザーはもちろん他の客の感想が聞けるのはメリット大だろうし、そのメリットが大きいからこそ旅行サイトは「お客様のこえ」が見れることを自分のサイトに置きユーザーを集客する。
とこういう事を書くと、実名ブロガーもじゃらんに載せる旅館のようにメリット求めてるんだから匿名批判を受け入れろ的議論を連想させるのだけど、実名ブロガーは皆ブログの女王じゃないぞって事のほかに問題として、あるギャップの存在がある。
実名ブロガーの提示するもの=エントリは部屋や書籍と違い、(あくまで)いっけん手軽なプロセスで消化できてしまう。大学教授がある意見を言うことにそれなりのプロセスがあったとしてもネットユーザーは一知半解できる。ここにギャップが生じている。実名ブロガーで知的職業の人が匿名を相手にするのに「よく読め」と言いがちなのは、気持ちが分かるのだ。これによる意識の隔たりも大きいだろう。
そして寄せられる匿名批判は量が多い割に質は低くなりアンバランスな状態が現出する。私がはてなのブクマを擁護できると感じたのは、このアンバランスがまだ極端ではないだろう、という事からきている。ログインしなければならないし、別アカを使ってもコメできる回数も限られる、しかも文字数も少ない。しかも直コメと違い、リンク表示しなければ、自分のブログは少なくとも表面上綺麗なままだ。沢山の批判コメがあることを知らずに通り過ぎる人もなかにはいるだろう。


長くなったので一端終わりたいのだが、このまま終わると適切に管理された匿名は擁護して良いのではないか、と結論しているかのようだが、今そんな事をいいたいわけでなく、ただ匿名のメリットについて考えてみただけで、自分の矛盾はここでは放置しておく。