本が売れないCDが売れない……

http://d.hatena.ne.jp/solar/20080605#p1へのブクマの補足。


この手の話になると、なぜか本屋だのネットとの関連だの再販価格だのプロモーションだの、流通(システム)の事ばかりが語られる印象で、それが不思議で仕方ない。
つまりは、商品そのものについて余り語られない。魅力的な商品であれば、常識的範囲内であればどんな売り方をしようとそこそこ売れると思うのだ。


もしかしたら、作家やミュージシャンが魅力的な作品を生み出せていないのではないか、という疑問は当然あっていいと思うのだが忌避されている。他の商品−洗剤や歯ブラシや洋服や電化製品なんかでは、そうした商品の売り手の側の問題はまず議論されるというのに。
作家やミュージシャンはクリエイターであり、常に敬うべきであり、売れないからといって彼らに問題などある筈がない、といわんばかり。


とはいえ、しかしここには、我々にある商品について「魅力的」と思わせるのは何か、という問題がある。
そして、決してその商品の内在的な価値ばかりがそう思わせるのではない、というところがある。たとえば、オスカーピーターソンやバドパウエルより上手いピアニストは今現在それこそ星の数ほどいるだろうし、録音だって50年前よりずっとクリアなのである。
しかしモダン・ジャズが、あの当時のようにメインストリームとして売れるという事はまず無い。
だから、今現代において売れないということをミュージシャンのせいであるとしても、ある意味可愛そうであって、ぜんぜん責められない。生まれた時代が悪いのだ、とすら言えなくもないのだから。


【我々にある商品について「魅力的」と思わせるのは何か、という問題】については、とくにこれと今断定するものでもないが、本やCDについては、食料品などと違い娯楽商品であるだけに「刺激」とか「未知への驚き」とかそういう要素は無視できない気はする。ビートルズ以上に内在的な価値=優れた良質な音楽を生み出したポップミュージシャンは、その後沢山いたと思うが、ビートルズは当時の社会にとってはとんでもない「驚き」だったと思う。
いっぽうビートルズを聴いても、ビートルズ似のポップバンドを聴いても何も衝撃でない我々は、またそれにも増して人間業ではない音楽にすら慣れてしまった。perfumeがいくら売れたからといって、もはや既に越えられない壁がある気がする。