そんな事しないよフツー、が脆くも崩れるとき

『たばこの煙払い、鼻折られる=嫌った学生殴った男逮捕』っていうニュースがあったんだけど、これに対する反応が興味深かったのでちょっと書いておく。
ところで、こんなのが何でニュースになったんだろうか。
殴った殴られたなんてどこにでも転がってる話で、道路上で幅寄せされたとか、電車のなかでケータイを注意されたとか、そんなトラブルは日常茶飯事なのでニュースにならない。
恐らくというか間違いなく、今回ニュースとなったのは、一つに殴ったのが「喫煙」を巡ってであり、そしてまた、よくありがちな注意されてカッとなってケンカに発展ではなく、嫌ったそぶりをしただけで殴られるというきっかけとしては非常にレアな出来事だったからに違いない。
繰り返しておくと、これはレアなケースなのだ。


まあ上記のことは、あくまで、報じられている通りという解釈でいえばなんだけど、実際嫌ったそぶりで突然殴るなんてことはまず無さそうとしか思えないのが第一印象なのだ。
そんなにひどい喫煙者ってあなたの周りにいますかね?
このニュースの中に「もみ合いとなり」とあるのがポイントで、実はお互い相当言い合ったあげくにポカリではないか、と私は想像するんだけど、そういう想像を働かそうとする人がここをみる限り、以前ちょっとお話した事があるid:ululunさん他数名しかいないのがちょっと悲しい。


#まあ、いちいちブコメしない人の中にはちゃんと想像する人もいるんだろうな、とは想像するけれども。


このニュースをストレートに受け取った挙句、これだから喫煙者は(怒)、とやる。
なんか、2重に、どうなんだろうそれと思う。まずこのニュースをストレートに受け止めちゃうことにおいて、そして、ストレートに受け取るなら受け取るでいいんだけど、これがレアケースであることを閑却していることにおいて。
ニュースってほんとに、報じられるべきニュースとみんなが潜在的に欲しているニュースが混在してるよなあ、と思う。
潜在的に欲している部分に合致すると、とたんに批評的なものを失って、報道側の思うがままになってしまう。
このブクマのコメントの8割がたを読んで感じるのは、これじゃ、宮崎某や加藤某のレアな事件に対するちょっと恣意的だなあというような背景の報道をもって、「これだからオタクは」とやってしまうオバサンオジサンと余り変わらないんじゃないの、ということ。
つまりオジサンオバサンはそういうふうに単純化して片付けたいわけで、上手い具合にそれに合致するように報じてくれるんだよね、ニュースって奴は時に。で、オジサンオバサンのなかで、オタクに対する偏向は増幅していく。


今回のニュースでも、これをもって喫煙者に対する偏見は多くの人のなかで増幅したであろうことは、ブコメを読む限り間違いない。レアケースなのにね。喫煙者はフツーこんな事しないのにね。一部の非喫煙者の人の頭のなかでは冷静な喫煙者像って脆くも崩れ去っちゃったんだろうなあ。おめでとうございます、こんなニュースをわざわざ配信したひとたち。(ってのは皮肉であって、どうせたいした陰謀も意向もないんだろうけど)


ちょっとマジメに終わっておくと、でもこれって、さっきはオタクバッシングに例えたけど、より大きな問題でいえば、レイシズムの問題においても、きっとこれと変わらないような構図でお互いの民族間の偏見や憎悪って増幅していったりするんじゃないのか、とか思う。
こないだの韓国の人のキジ殺しじゃないけど。そういえば毎日新聞のアレだって、あれで日本人全体を誤解されたら困ったりするから騒いでるんじゃなかったっけ。
マスコミの役割ってやっぱまだまだ大きいんじゃないか、と今回の事でちと思ったりもしたくなる事であった。